
熊本地震後の区分所有マンション建替えはどう進める?決議要件の基本を管理組合役員向けに整理
一部の住戸だけが深刻な被害を受けた場合や、応急的な修繕でしのいできた場合など、
さらに、建替えを選ぶにしても、区分所有法やマンション建替え円滑化法、熊本地震を踏まえた被災マンション法など、複数の法律が絡み合い、決議要件も複雑に感じられることでしょう。
そこで本稿では、熊本地震後の区分所有マンションについて、再建の全体像から建替え決議の基礎、被災マンション法の特徴、そして今から取るべき実務対応までを、管理組合役員の方の立場に立って整理していきます。
順を追って確認していくことで、自身のマンションにとって最も現実的で、かつ将来の安心につながる選択肢を検討するための手がかりを得ていただけるはずです。
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熊本地震後の区分所有マンション再建の全体像
熊本地震では、最大震度7の揺れが連続して発生し、多くの区分所有マンションで躯体や共用部分に深刻な被害が生じました。
外壁や柱の損傷、配管の破断、エレベーター設備の故障など、物理的な被害の種類も多岐にわたりました。
その結果、管理組合では「応急修繕で住み続けるのか」「全面的な建替えを目指すのか」という根本的な選択を迫られる場面が増えました。
さらに、区分所有者の事情や考え方の違いから、合意形成に長い時間を要し、意思決定が進まないことも大きな課題となりました。
このような再建局面では、まず区分所有法が区分所有者の権利関係や管理組合の意思決定方法を定める基本法として土台になります。
区分所有法では、建替え決議には区分所有者数および議決権数の各5分の4以上の賛成が必要とされており、通常は非常に重い決議であると位置づけられています。
一方で、マンション建替え円滑化法は、建替え組合の制度などを通じて、建替え事業の具体的な進め方や行政の関与の枠組みを整える役割を担っています。
さらに、大規模災害で被災した区分所有建物については、被災マンション法により、期間や地域を限って特別な決議要件や手続が認められ、再建を後押しする仕組みが用意されました。
管理組合役員として建替えを検討する際には、いきなり是非を議論するのではなく、一定の手順を踏むことが重要です。
まず、建物や設備の被害状況や耐震性能について、専門の建築士等による調査・診断を実施し、客観的なデータを把握します。
次に、その結果を踏まえ、区分所有法やマンション建替え円滑化法、被災マンション法などの適用可能性について、弁護士やマンション管理士などの専門家に相談し、法的な選択肢とリスクを整理します。
併せて、建替え費用や仮住まい費用、各種補助・減税措置など資金面の検討を行い、その内容を分かりやすい資料にまとめて、組合員へ丁寧に情報提供を重ねていくことが、合意形成を進める上での基本的な流れになります。
| 段階 | 役員の主な作業 | 押さえる法律・制度 |
|---|---|---|
| 被害状況の把握 | 専門家による調査依頼 | 耐震改修促進法関連資料 |
| 再建方針の検討 | 修繕案と建替案の比較 | 区分所有法の決議要件 |
| 事業スキーム整理 | 補助制度や税優遇確認 | 建替え円滑化法等の枠組み |
| 合意形成の実務 | 説明会開催と資料配布 | 被災マンション法の特例 |
区分所有法に基づくマンション建替え決議要件の基礎
まず押さえておきたいのは、区分所有法における「建替え決議」が、区分所有建物そのものを取り壊し、新たな建物を建築するかどうかを集会で決める重い決議であるという点です。
この場合、単純な過半数では足りず、区分所有者数と議決権数のそれぞれについて総数の5分の4以上の賛成が必要とされています。
また、決議の対象には取り壊し後に建てる建物の概要や費用負担の方法など、再建計画の中核となる事項が含まれるため、事前の情報提供と合意形成の準備が欠かせません。
熊本地震後の被災マンションでも、この高い要件を前提として、修繕か建替えかの判断が行われてきました。
次に、「建替えを検討すべき状態」と判断される法的・技術的な基準について整理しておくことが重要です。
耐震性については、耐震改修促進法に基づき、昭和56年以前の旧耐震基準で建てられた建物などについて耐震診断の実施が求められ、一定の耐震基準を満たさない場合には耐震改修や建替えの必要性が高いと評価されます。
また、現行の建築基準法に適合していない「不適格建築物」で、大規模な修繕や改築が難しい場合には、長期的な安全性・経済性の観点から建替えの検討が現実的な選択肢となり得ます。
さらに、著しい老朽化や損傷により、自治体から要除却等認定を受けるおそれがある建物では、居住者の安全確保の観点から早期の再生方針の検討が求められます。
加えて、令和7年公布・令和8年4月施行の改正区分所有法等では、老朽化マンション等の管理および再生の円滑化に向けた枠組みが整備されつつあり、今後の建替え決議や再生スキームの選択肢に影響を与えるとされています。
例えば、要除却等認定を受けたマンションについては、建替えに限らず、敷地売却や建物更新など複数の再生手法を検討できるようにする方向性が示されており、それぞれに応じた多数決のルールが設けられる予定です。
また、所有者不明や管理不全の専有部分への対応が強化され、総会決議の成立を阻んでいた要因を解消しやすくする仕組みも盛り込まれています。
熊本地震後の管理組合役員としては、従来の建替え決議要件だけでなく、改正法に基づく新しい再生スキームの位置付けを理解し、自らのマンションに適した選択肢を検討することが大切です。
| 項目 | 内容 | 管理組合の確認点 |
|---|---|---|
| 建替え決議の要件 | 区分所有者数・議決権数各5分の4以上 | 総戸数と議決権割合の最新確認 |
| 建替え検討の目安 | 耐震性不足・不適格建築物・著しい老朽化 | 耐震診断結果と修繕履歴の整理 |
| 改正法の影響 | 要除却等認定等による再生手法の多様化 | 自マンションに適用可能な制度の洗い出し |
熊本地震で適用された被災マンション法と決議要件の特徴
被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法は、大規模な災害で損傷した分譲マンションの再建や敷地の活用を進めるための特別法として制定されました。
平成28年熊本地震についても、この特別措置法を適用する政令が公布され、一定の被害を受けた区分所有建物が対象となりました。
対象となるのは、政令で指定された災害により大規模一部滅失などの被害を受けた区分所有建物であり、適用期間も政令で区切られています。
管理組合としては、自らのマンションがこの特別措置法の対象とされたかどうか、当時の政令指定の有無や期間を確認することが重要です。
被災マンション法では、区分所有者全員の合意が必要であった民法上の原則に代わり、多数決により取壊しや敷地の売却を進められるよう決議要件が緩和されています。
具体的には、建物の取壊しや建物・敷地の一体的な売却などについて、区分所有者数および議決権の各5分の4以上の多数で決議できる仕組みが設けられました。
さらに、敷地利用権を伴う敷地売却等では、敷地利用権の5分の4以上を有する者の賛成も必要とされるなど、権利関係に応じた要件が定められています。
このような多数決による意思決定が可能になったことで、熊本地震後のような深刻な被災状況でも、再建の合意形成を現実的な水準に引き下げる効果がありました。
熊本地震後の分譲マンションの再建では、管理組合が選択できる制度として、民法に基づく全員同意による取壊し・売却、区分所有法による建替え決議、被災マンション法による取壊し・敷地売却決議など、複数のメニューが並立しました。
民法による全員同意は最も伝統的な方法ですが、1人でも反対や連絡不能の区分所有者がいると手続が進まないという実務上の課題があります。
区分所有法に基づく建替え決議は、区分所有者数および議決権の各5分の4以上で建替えを決定できる一方、原則として建物を建替え、敷地を引き続き共有して利用することを前提とする枠組みです。
これに対し、被災マンション法の取壊し・敷地売却決議は、被災建物を除却したうえで敷地を売却し、その対価を各区分所有者に配分するスキームであり、老朽化や大規模被災で再建自体が困難な場合の出口として位置付けられました。
| 制度名 | 主な決議要件 | 典型的な活用場面 |
|---|---|---|
| 民法による全員同意 | 区分所有者全員の合意 | 少数戸数の合意形成容易な物件 |
| 区分所有法による建替え決議 | 区分所有者・議決権各5分の4以上 | 建替え前提の長期的再生 |
| 被災マンション法による取壊し等 | 区分所有者・議決権各5分の4以上 | 大規模被災で再建困難な事案 |
管理組合役員としては、これらの制度がそれぞれ異なる目的と決議要件を持っていることを理解し、マンションの被災状況や今後の再建方針に照らして最適な枠組みを選択する必要があります。
また、被災マンション法は特定の災害と期間に限定した特別措置であり、熊本地震を対象とする政令指定の期間も既に終了しているため、現在は同じ条件で新たに利用できる制度ではありません。
その一方で、国土交通省は被災マンション再生に関するマニュアル等を公表し、今後の大規模災害時にも活用可能な再建スキームの整理を進めています。
熊本地震後の経験から、管理組合役員は、平時から区分所有法や関連特別法の選択肢を把握し、災害時に迷わず適切な決議手続を検討できる体制を整えておくことが求められます。

熊本地震後の管理組合役員が今から確認すべきポイント
まず確認していただきたいのは、建物の安全性に関する基礎資料です。
耐震診断の有無や結果、指摘事項への対応状況を整理し、必要であれば耐震改修促進法に基づく制度や自治体の支援制度を再確認することが大切です。
あわせて、長期修繕計画が最新の修繕履歴や物価動向を反映しているか、国土交通省のマンション管理・再生に関する情報も参考にしながら見直しておくと、今後の判断がしやすくなります。
次に、敷地や権利関係の整理が重要です。
敷地権の種類や共有持分の割合、共用部分の範囲などが管理規約や登記事項と一致しているかを確認し、誤りや不明点があれば早めに専門家への相談ルートを検討しておくと安心です。
また、専有者名簿については、現住所や連絡先、賃貸中か自主管理かといった基本情報を更新し、総会や意向調査の際に確実に連絡が届く体制を整えておくことが、合意形成の前提条件となります。
さらに、改正区分所有法や老朽化マンション対策の改正法の施行時期と内容を把握しておくことも欠かせません。
法務省や国土交通省が公表している資料では、老朽化マンションの管理や再生を円滑にするための新たな仕組みや、総会決議・管理規約の見直しが必要となる事項が示されています。
これらの改正内容を踏まえ、自らのマンションでいつまでに何を準備する必要があるかを一覧に整理し、理事会の議題や年間スケジュールに落とし込むことで、対応漏れを防ぐことができます。
| 確認項目 | 主な内容 | 担当と期限 |
|---|---|---|
| 耐震性・修繕状況 | 耐震診断結果と長期修繕計画 | 理事会で年内点検 |
| 権利関係の把握 | 敷地権・登記・名簿整備 | 管理会社と共同整理 |
| 法改正への対応 | 改正区分所有法と関連法 | 専門家相談時期の確認 |
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まとめ
熊本地震後の区分所有マンションでは、修繕か建替えかの判断と、区分所有者間の合意形成が最大の課題となります。
区分所有法やマンション建替え円滑化法、被災マンション法など、複数の法律が関わるため、自己判断だけで進めることは大きなリスクになります。
まずは現状の被害状況や耐震性、長期修繕計画、名簿や敷地権の状態を整理し、総会での決議要件や進め方を、早い段階で専門家と確認することが重要です。
当社では、熊本地震後のマンション管理組合の実務対応や建替え検討の進め方について、初歩的なご相談から丁寧にお手伝いいたします。
「自分たちのマンションはどうすべきか」を一緒に整理したい管理組合役員の方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。








